油麩 と 麩 のちがい

油麩は小麦のグルテンを棒状にして油で揚げたもので、麩は小麦のグルテンを焼いたり蒸したりしたものです。
宮城県登米市の郷土料理「油麩丼」は、油で揚げた油麩を卵でとじてご飯にのせた優しい味わいの丼です。
かつ丼に似ているけれどお肉の代わりに油麩を使っていて、だしをしっかり吸ってコクがありながらあっさり食べられます。


地蔵さん、この前ね、宮城県の登米市に行った人からお土産をもらったの。その時に「油麩」って名前を聞いたのだけど、普通の麩とどう違うのか気になっちゃったの。地蔵さん、教えてくれる?

ええ、もちろんです。まず「麩」というのは小麦粉を水で練り、でんぷんを洗い流して残る「グルテン」を原料にした食品の総称です。日本では古くから精進料理などで使われてきました。麩には大きく分けて、生麩、焼き麩、揚げ麩などの種類があります。

ふんふん、麩って色々な種類があるんだね。じゃあ、その中で油麩はどんな位置づけになるの?

油麩は「揚げ麩」に分類されます。特に宮城県登米市で発展した独特の食文化で、棒状に成形したグルテンを植物油で揚げて作ります。長さはおよそ二十五から二十六センチほどあり、フランスパンのような姿をしています。切って使いやすい形ですので、家庭料理に幅広く使われています。

そんなに長いの? 想像するとちょっとかわいらしい形かも。じゃあ、普通の焼き麩や生麩とはどう違うのかな?

違いの大きな点は「揚げる」工程を加えていることです。生麩は蒸して作り、もちもちとした食感が特徴です。焼き麩は焼いて乾燥させるため、軽くて保存性に優れています。一方で油麩は油で揚げるため、香ばしい風味と独特のコクを持ち、出汁をよく吸います。そのため煮物や汁物で使うと、とても味が染みやすいのです。

なるほど、それでお土産の人が「お味噌汁に入れるとすごく美味しいよ」って言ってたんだね。油を吸ってるからコクがあるのかな。

その通りです。さらに油麩は保存性が高く、常温で長く保管できる点も特徴です。冷蔵が難しかった時代、夏場に豆腐や油揚げが傷みやすかったため、その代わりに使える食材として明治時代の終わり頃に登米で考案されました。精進料理や家庭料理において重宝され、やがて地域の名物として広まったのです。

へええ、そんな歴史があったんだね。じゃあ、宮城県の登米市では油麩を使った有名な料理ってあるの?

登米市周辺では「はっと汁」という郷土料理がよく食べられており、その中の具材として油麩が入ることもあります。

はっと汁って、小麦粉を伸ばして入れるやつだよね。そこに油麩まで入ったら、かなり食べごたえがありそう。

ええ、登米の食文化は小麦を大切にする背景があります。はっとも油麩もその延長にあると言えるでしょう。

そう聞くと、油麩って登米市の人たちの知恵と暮らしから生まれた食べ物なんだね。あ、そういえば「仙台麸」って名前も聞いたことがあるけど、それは油麩とは違うの?

「仙台麸」は油麩の一種で、宮城県登米市の山形屋商店が商標登録した名称です。つまり「油麩」の中でも特定の商品やブランドを指すときに使われます。一般名は「油麩」ですが、宮城県内では仙台麸という呼び名でも親しまれています。

ふむふむ、つまり「油麩」というのが正式な名前で、「仙台麸」はその中のブランドの一つってことなんだね。

その理解で間違いありません。

ところでさ、油麩がメインになった丼があるって聞いたんだけど。

はい、油麩丼についてですね。油麩丼は宮城県登米市で生まれた郷土料理です。特徴としては、かつ丼のかつを油麩に置き換えている点にあります。油麩をだしや醤油、みりんなどで煮て、卵でとじてご飯にのせるのが油麩丼です。

あ、やっぱり「丼」ってつくからご飯にのってるんだね。でも、お肉のかわりに油麩を使うなんてちょっと珍しいね。どうしてそういう料理が生まれたの?

由来としては、登米市に伝わる油麩をもっと活かしたいという地域の思いから考案されたものです。登米市の商工会が中心となって「油麩丼の会」を結成し、地域おこしの一環として広めていきました。実際に「B-1グランプリ」にも参加して、登米市の郷土料理として全国的に知られるようになったのです。

なるほど、地域の人の工夫と努力で広まったんだね。じゃあ味はどんな感じなのかな。お肉を使わないから、物足りなさとかはないの?

油麩は揚げてあるため、香ばしい風味と独特のコクがあります。それにだしをよく吸い込む性質があるので、卵や玉ねぎと合わせて煮ると口いっぱいに味が広がります。実際に食べた人の感想としては「優しい味」「あっさりしているけれど満足感がある」と表現されています。油麩丼は肉を使っていなくても食べごたえがあり、地元の人々にも観光客にも人気があります。

優しい味っていいね。旅行で食べたらほっとしそう。実際に食べられる場所は登米市にあるの?

はい、登米市を中心に提供している店が多いです。はっと汁とのセットがある場所も多いですよ。油麩丼は登米市の観光資源とも結びついています。登米市は「みやぎの明治村」と呼ばれ、歴史的な建物や蔵が残る地域です。観光で訪れた人が散策の合間に油麩丼を味わうことで、より登米らしさを体験できるという面もあります。

歴史ある町並みを歩いて、休憩がてら油麩丼を食べるなんて素敵だね。そうやって食と町並みを一緒に楽しめるのって旅の醍醐味だと思うな。

まさにその通りです。油麩丼は単なる食事というより、登米市の文化や生活を感じさせてくれる存在です。油麩という保存食を活かした知恵が形になり、今では地域を代表する料理として全国的に知られています。

今日話を聞いて、油麩丼ってただの郷土料理以上の意味があるんだなって思ったよ。登米市に行ったら絶対に食べてみたい!ありがとう地蔵さん。ますます宮城県に行きたくなったよ。油麩丼に出会える旅を楽しみにしてみるね。

そのお気持ちがきっと旅をより良いものにするでしょう。あなたが油麩丼を味わう日を心待ちにしております。
|

わぁ、油麩丼って聞くだけでお腹が鳴っちゃう!歴史ある町を歩いて、あったかい油麩丼を食べたらきっと最高だろうな。早く宮城に行って、自分の舌でその味を確かめてみたい!
前の旅は↓ココだよ