イヌワシの繁殖地(宮城県天然記念物)

宮城県の翁倉山は、木の上に巣を作る珍しいイヌワシの繁殖地で、昔は南三陸地域に複数のペアが暮らしていました。
今は繁殖が確認されていないけど、環境再生や日本初の野生復帰プロジェクトが進められています。
広大な森の整備や餌の確保、国内外の協力で、大空を舞う姿を取り戻そうとしています。


地蔵さん、宮城県のイヌワシの繁殖地について色々調べてくれたみたいだけど、どんな場所なの?特に特徴とか歴史が知りたいな。

宮城県石巻市の旧北上町と登米市にまたがる翁倉山に、天然記念物に指定されているイヌワシの繁殖地があります。一般的にイヌワシは断崖の岩棚に巣を作りますが、この場所ではアカマツやヒメコマツの巨木の上に巨大な巣を作るのが特徴です。東北地方で初めて繁殖が確認されたのは1955年のことです。それ以降もペアの繁殖が続き、南三陸地域では最大4組のペアが確認されていましたが、2015年ごろ以降は繁殖の確認がされていません。

断崖じゃなくて木の上に巣を作るなんて珍しいんだね。大きさってどれくらいなの?

翼を広げたときの長さは約2メートルにも達します。日本国内では数が少なく、希少な大型猛禽類として知られています。

そんなに大きいんだ…迫力ありそう。でも最近は繁殖が確認されていないって聞くと、やっぱり心配になるな。保護とか再生活動ってどうなってるの?

はい。南三陸地域では「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会」が活動しています。震災復興のシンボルとして、林業資源の循環利用を行いながら、イヌワシの狩り場となる開けた環境を創出する取り組みです。2020年には南三陸町、登米市、株式会社佐久、宮城北部森林管理署によって「南三陸地域森林整備推進協定」が締結されました。この協定は民有林817ヘクタール、国有林2,869ヘクタールを対象に主伐や間伐などを計画的に行い、生息環境を改善するものです。

すごく広い範囲でやってるんだね。それ以外にも活動はあるの?

あります。日本自然保護協会と南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会が共同で「南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト実施計画書」を策定し、環境大臣の認定を受けています。2026年6月に動物園で生まれたイヌワシを初めて放鳥する計画で、2029年までに3回の放鳥を予定しています。

それは日本で初めての取り組みなんだよね?

はい、日本初です。このプロジェクトでは、2023年8月に専門家も加わるワーキンググループを設置し、国内外のガイドラインに基づいて「野生復帰の必要性の検討」「実施可能性の評価」「実施計画」の3段階を経て準備を進めています。2025年7月30日には南三陸町で説明会も開かれました。また、この計画には2025年から2029年の間で約1億円の資金が必要で、その使途は放鳥のための設備整備や科学的なモニタリングの継続です。

資金や設備もしっかり準備しないといけないんだね。餌のことはどうなの?ちゃんと暮らせる環境はあるのかな。

南三陸地域ではイヌワシの主要な餌であるノウサギのカメラ撮影頻度が、群馬県みなかみ町と比べて2倍以上高いことが確認されています。これは再定着のための餌資源が豊富であることを示しています。

なるほど、餌は十分にあるんだ。海外の知見とかも取り入れてるの?

はい。イギリスのスコットランドにあるRoyal (Dick) School of Veterinary Studiesの専門家が日本を訪れ、イヌワシ保全のアクションプラン作りを支援しました。研究者や政府、NGO、動物園関係者と会合を持ち、衛星追跡タグによるモニタリングや健康管理プロトコルなどについて意見交換を行っています。

国際的な協力もあるんだね。こうして聞くと、宮城のイヌワシはただの希少な鳥じゃなくて、地域や人のつながりも含めて守られてるんだって感じるよ。

その通りです。翁倉山の繁殖地は歴史的にも重要であり、現在も環境の再生や野生復帰に向けた具体的な活動が続けられています。こうした努力が実を結び、再び繁殖が確認される日を目指しているのです。

うん、その日が来たら絶対に見に行きたいな。大空を舞う姿を、実際にこの目で見てみたい。

木の上に大きな巣を作る珍しいイヌワシが暮らしていた翁倉山、森も広くて餌も豊富なんだって。
今は野生復帰の準備中で、また空を舞う姿が見られるかもしれないと思うとワクワクする。
ぼくもその日を見に、この場所に行ってみたくなったよ。
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